「飛ぶ魚」をオープンするにあたって、奥の棚にどうしてもおきたかったものにモンの人々(ラオスの山に住む山岳少数民族)の作ったポーチがあります。細かいクロスステッチの手刺繍でできたポーチ、ペンシルケース、ジュエリーケースなど、きれいで大好きで長年愛用してきました。このケースの中に小さな紙が入っていて、こんな文章が書かれています。
「モン族は、山を自由に歩き回り自然とともに暮らしてきた人々です。しかし、インドシナ戦争の影響を受けて、多くの人が難民となり、隣の国タイの難民キャンプで長い間暮らしていました。~不自由な難民暮らしの中でも、自分たちの民族に伝えられてきた、得意とする刺繍を続けていました。今、ラオスに帰還し、故国での再出発を始めた人々がいます。山を開いて畑を作り、ぎりぎりの自給自足の生活です。その畑仕事の合間に、小さい女の子からおばあさんまで、女たちが一針一針、一生懸命作った刺繍です。刺繍がノートになり、薬代の助けになっています。そんなことを、心の片隅にとめて、お使いくだされば幸いです」
これを書かれたのは、ラオスの住んで、絵本を読んだり、図書館をつくったり、語り伝えられてきた昔話を採集したりして、モンの人々といっしょに生きてきた安井清子さんです。
安井さんがちょうど帰国されたので、私が講師を務めている横浜のY大学にお話にきていただきました。絵本や昔話の世界を知ることは、限られた世界しか知らないモンの子どもたちにとって生きてゆく大きな力になると、信じている。テレビは向こうから流れてくるけれど、絵本は自分からページをめくり、生きたことばで伝えられるから。と話してくださいました。モンの人々とは違う意味で閉塞状況に置かれている日本の子どもたちにも同じことが言えると私は思います。安井さんがカメラに収めた子どもたち、弟をおんぶする小さな女の子、水の入った重いバケツをかついで何回も水を運ぶ男の子、水牛と遊び戯れる子どもたち、みんな目がきらきら輝いていました。
6月の21日(金曜日)午後7時54分より「世界ナゼそこに日本人」(テレビ東京)で、安井さんのラオスでのようすが放映されます。ぜひご覧ください。
モンの人々のポーチはしっかりできているので、洗濯しても大丈夫、色落ちもしないすぐれものです。ぜひ、手に取ってみてくださいね。
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