<流木>
2009年の新潟県で行われた越後妻有アートトリエンナーレで、廃校になった小学校をまるごと絵本にする「絵本と木の実の美術館」が始まる。当時生徒が3人になってしまった廃校になる学校には、子どもの元気な笑い声やおしゃべりや足音を食べていたおばけが住んでいる。体育館いっぱいに、階段に、流木でつくられたおばけたちがいる。そのうちの五つが今「飛ぶ魚」にきています。入口のところにバッタが3匹いて頭に水がたまるのその水が流れる力で、中のおばけのいくつかが動く仕掛けもあります。この廃校があるのは、すり鉢状になっている「鉢」という名の集落。その底の部分に小学校があり、村民はみんなその学校でそだったから、学校への愛着は大きい。だからこの美術館をつくるのにおじいちゃんやおばあちゃんも協力をしてくれた。そんないい感じのよさのためか、めちゃくちゃ人が来て人気の美術館になる。来て「こわい」と泣く子もいたけどね。この「絵本と木の実の美術館」は廃校活用の全国一番に選ばれたり、教科書にものってるんだよね。
<木の実>
『ガオ』という絵本は木の実でできた絵本。歩いて集めた木の実を使って並べて写真をとって作ったこの絵本を、松居直さんが「生きる力をかきたててくれる絵本」といってくれてるんだよね。もう木の実がなくなったり色が変わったりしたので「また来年つくりましょう」と編集のひとがいって、あしかけ3年くらいかかってつくった。
木の実はたくさん集めて、展覧会の作品にもした。(写真右上)フランスの美術館の館長が「こんなことをできる人は世界にひとりです」といった。日本に一人だとは思っていたけど、世界に一人と言われてうれしかったねえ。ふと考えると木の実の作品というのは、木の実の中に虫がすんでたり、木の実が劣化したりで、所蔵もできないものだなあ、と。木の実拾いに歩くとあったはずの場所に木がなかったりするのね。伐採されて。でも子どもの木の実は地面に残っているのね。これは捨てられた木の魂なんだなあ、と、カラカラの実を集めてる。どんぐりは狸やクマのエサなので、ハカマしか拾わない。
<アール・ブリュット>
フランス語で「生の芸術」という意味。
はじめて彼らのことを知ったのは四日市の本屋メリーゴーランドにあった土鈴だったのね。1984年。それが良くて買って、信楽の伊藤喜彦という人の作品でね。それで彼をたずねていって、主に知的障害のひとたちが作ったものを見て、これこそほんとの芸術、と思ったね。この人と会って、今のぼくがあるともいえる。それから、みんなと友達になって、2010年にはパリのアール・ブリュットの展覧会に出品した。この展覧会のためフランスから来た館長がぼくの『はたけうた』の絵を見て「あなたは日本のマチス」といった。これ、いい本でしょう?
田島征三さんの多彩な芸術家としての作品は、いつも「今」に輝き、「今」のエネルギーに溢れています。
ぼくは過去には興味がない、今やりたいことで、いっぱいになってものを創りたいんだ、と言われてました。そんな田島さんの仕事は、小さな小さな絵本にでも、生きることのエネルギーが飛び跳ねていて、大人も子どもも元気にしてくれます。
当日は外の雨の音、雷の音が聞こえるなかでのお話でしたが、とちゅう「ぼくの好きなのみもの」を補充され、観客の最前列に織茂恭子さんがいらして、あいづちや質問をしてくれて、上り調子にお話も盛り上がり、思わず笑いを誘う、自然でおもしろい話しぶりに「たしませいぞうさん」を満喫させてくださいました。ほんとにありがとうございました。
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