3月7日(土)小雨が止んだ午後2時から降矢ななさんのトーク会が、小さな「飛ぶ魚」のスペースいっぱいの方たちをお迎えしてはじまりました。絵本作家として『めっきらもっきらどおんどん』で元気なスタートをきった降矢さんは、バブル真っ盛りの日本を出てスロバキアの美術大学に留学します。カーライ先生という素晴らしい先生について絵の勉強をしたいのと、自分にはもっと何かが必要だと思ったこと、そしてバブル期の日本の状態が好きではなかったことがそのきっかけになったそうです。その後スロバキアの方と結婚、娘さんが生まれスロバキアでの生活をもう20年以上おくりつつ、日本の子どもたちに楽しい絵本をたくさん描いてくださっています。降矢さんが用意された写真を見ながら、「降矢さんが好きなスロバキア」を堪能させてくださいました。まずだんなさまの実家のエコロジカルな生活。ミツバチを飼育するおばあちゃん、きのこがりに孫をつれていくおじいちゃん、ブタやニワトリの飼料の山に寝転んで遊ぶ娘さんのいとこたち。そんな生活は降矢さんご自身の『ちょろりんのすてきなセーター』にでてくるご自身のおじいちゃんの姿とリンクして心惹かれるものだといわれまし
た。ご自分の子どももこういう生活を味わうことができてスロバキアにいてよかった、今の日本ではむずかしかったかもしれない、とも。そしてそこからキノコ狩りの絵本『ナミチカのきのこが
り』が生まれたこと。それから降矢さんの絵本によく登場する「キツネ」。はじめは自分がお話の中にキツネとして入ることでその世界を描いていた、犬を飼うようになってからは無意識のうちに絵本の中のキツネと犬が同化して、キツネも幸せにしたい、という気持ちが働いていると語られていました。たしかに、今回「飛ぶ魚」で展示中の絵本『まゆとかっぱ』の中で、キツネはちゃんと子ガッパと仲良しになっているようすが描かれていました!
終始にこやかに、親しみを込めて語りかけてくださった降矢ななさん。降矢ななさんの絵本がこんなにも心に飛び込んでくるのは、生活の細部へのいつくしみ、虫や動物たち、生き物への親近感に支えられているからなんだ!と実感しました。そして子どもたちの生活を脅かすものへの、日本の原発への危機感に真摯に向き合っている降矢さんの基にあるのは、スロバキアの田舎で子どもたちが自然の中でのびのびと遊び働く暮らしをいとおしむ、人としての思いなのだと思います。この日本に子どもたちとともに住んでいる私たちもまた、それぞれの素朴な生活を大事にていねいにおくりつつ、それを脅かすものには敏感でありたいと願わずにはいられません。
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