「マプラ刺繍の絵本展」がおとといの9月4日土曜日から始まりました。初日、夏休み明けの展示でしたので、なつかしい方々や、東京からもいらしてくださって、ちょっと暑いぐらいのお天気の日でしたが、風が爽やかでいい日でした。前日下諏訪から来ていたRちゃんが手伝ってくれてのんびりできました。今回湯河原の「たんぽぽ作業所」のみなさんがつくってくださったのは、絵本のかなめの登場人物のイルカと貝。毎回絵本にあわせた美味しくて楽しいオリジナルクッキーをつくってくださっています!
翌日の5日土曜日は、マプラ刺繍でできた絵本『マザネンダバ』の訳者であり、総合コーディネータをしてくださった三浦恭子さんのトーク会でした。お天気も良く海も見渡せて、テラスも気持ちよく、名古屋から来てくださる三浦恭子さんをこんな日におむかえできて、よかった、と思いました。三浦さんは南アフリカ共和国の首都の町の様子、隣接する黒人居住地域の貧しい様子、また北東部に居住するンデベレ族の美しい幾何学模様を描いた家々の様子、スラムのストリートチュードレンの青年の作った素晴らしい陶器などの画像を見せてくださいました。ちいさなふつうのかわいいお家の窓にも防犯の鉄格子があるようすも。
三浦さんがNGOの開発プロジェクトのひとりとして、南アフリカにわたったころはマンデラが釈放され、アパルトヘイト(人種隔離政策)から解放され、前向きな希望にあふれていた時でした。その中で1991年ヴィンターフェルトという、かつての黒人居住区で、女性たちの自立をめざす人権保護団体「ソロプチミスト・インターナショナル」の支援のもとに、黒地にカラフルな刺繍をほどこしたマプラ刺繍がうまれました。三浦さんがマプラ刺繍にであったのは1998年。その刺繍に魅せられ三浦さんは、そこでも、アフリカの女性たちの元気で、積極的に、前向きに生きる姿を目にします。
三浦さんが日本でマプラ刺繍を紹介された伊豆高原のギャラリーで、その、前に飛び出してくるようなエネルギーにひかれた私は名古屋に三浦さんをお訪ねして、その刺繍を日本の子どもたちに、南アフリカのお話といっしょに伝えたい、とお話しました。その時からお話探しからはじまり、ラフスケッチ、本刺繍、絵本の完成まで、2005年から2012年までのなんと7年の歳月がかかりました。その間、編集部の注文を三浦さん現地のスタッフに伝え、そのスタッフが実際に刺繍をしてくれている25人のグループの一人に伝え、それをその人がみんなに伝え、というインターネットも、携帯もなく、電話もままならない地域での仕事には一つの事柄を伝えて完成するまで3か月はかかったということです。どんなに大変なことだったか?三浦さんのお話をうかがって、あらためて思い知らされました。そのおかげでできあがった刺繍のすばらしいこと! 印刷ではなかなか味わいづらいもとの刺繍のすばらしさをぜひ、たくさんの方に見ていただきたいと思います。
最後に三浦さんが絵本「マザネンダバ」を読んでくださいました。「なにかがたりない。お話がないんだ」と感じた人間の家族のおかあさんマザネンダバが森の動物たちに「お話がどこにあるかしっていますか」とたずねあるき、ついに海底の王様から「お話の貝」をプレゼントしてもらうというストーリー。三浦さんはマザネンダバが出会う動物たち、うさぎやへびやぞうのことばをとてもじょうずに語ってくれて、みんなをどんどんお話の世界へつれていってくれました。ひとりで読んでいると、「長いな」と思うのですが、三浦さんに読んでもらったときはおもしろくて、全然長さも感じず、終わったときは心から満足しました。聞いていたみなさんからも思わず大きな拍手がおこりました。さすが元東海地方のアナウンサー『ビバちゃん』でした! お話の途中も聞いていらっしゃるみなさんから、あいづちや笑い声があふれ、なごやかで楽しいひとときでした。
この「マプラ刺繍の絵本展」は10月10日(土曜日)までの金曜日と土曜日に展示しています。どうぞご都合をつけていらしてくださるとうれしいです。なお9月26日(土曜日)は絵本を楽しむ会で、子どもたち(3歳から小学校3年生)の参加をお待ちしています。こんどはお月見のころですね。どんな絵本を読もうかと、相談中!
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