昨日は名古屋からおいでの画家、伊藤秀男さんのトーク会でした。「飛ぶ魚Tシャツ」をお召しになった伊藤さんは静かにゆったりと登場されました。伊藤さんの絵本や絵が好きなたくさんの方がお集まりになり、今回展示の『タケノコごはん』(大島渚文・ポプラ社)の絵のお話を中心にした伊藤さんの絵についての語りに耳をかたむけました。大島渚さんが小学校三年生の息子への宿題「子どもに伝えたいこと」に書かれた文章に絵をつけて、「これがほんとうのことなのだ、と読む人に感じてもらう絵を」と志し描かれたすばらしい原画。その一つ一つはイメージと合致する対象との出会いを基に、ご自分の中の記憶をさぐりそれと重ねながら表現されている、ということを、具体的に話して下さいました。たとえばお話の舞台の小学校は京都の町を散歩していて見つけたモダンなコンクリートづくりの古い校舎。先生はどちらも自分の思い出にある先生たちと重なっている。さかいくんは難しかったが、お釈迦さまが亡くなってまわりで人々が泣いている図のうちの一人の顔を思い浮かべたらかけた。お葬式で泣いているおかあさんは着物を着たおくさまに泣いてもらってかいた。ちょっとした紋の出方とかがかくときにわかってよかった。先生がさかいくんに「どうした」と問いかける頭のかしげかたも。まっすぐだと詰問しているようだし少し前かがみにしたほうがいいと思った、等々。同時に展示中の絵本『がちゃがちゃ』のくつわむしは、今はなかなか見つからなくなったが、徳島の友人宅の庭でつかまえて描くことが出来た。
伊勢湾台風に襲われた実家は台風のあと風景が変わってしまったので、自分の幼少期のできごとは今はない前の風景を描いている、と話されていました。
具体的なエピソードは一つ一つわかりやすく、伊藤さんが描きたいイメージを伝えるために、物語をほんとうに物語るために、外と内を重ねながら絵として表出されるようすが、とてもよく伝わってきて、心うたれました。
夜の食事会でおなかがいっぱいになった後では、伊藤さんのご提案で、伊藤さんとご縁のあるネパールの踊りをネパール人のプルさんご一家といっしょに踊りました。お酒といっしょにあたまがくるくるまわり、楽しい宴のひとときとなりました。
翌日は熱海の泉に四年間住んでらした伊藤さんの20年前の思い出深いおうちのある場所を再訪され、お隣の方と偶然お会いになったり、湯河原図書館で原画展をなさったときの会場や司書のかたたちとお会いになったり、20年ぶりの再訪の地を楽しんで、名古屋に帰られました。
伊藤秀男展は10月15日までの金・土11時30分から17時まで開催です。どうぞすばらしい絵を見にいらしてください。
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