- あいにくの雨がしとしと降る高台の「飛ぶ魚」でしたが、今展示中の絵本『タケノコごはん』の作者、大島渚映画監督の奥様で、女優の小山明子さんが入ってらしたとたん、あたりがぱーっと華やいだ空気に包まれました。この絵本の文章はご同行されたご長男、武さんが9歳のときの、親に子ども時代の思い出を書いてもらうという宿題に、大島渚さんが書かれたものです。
- 今日はこの絵本の画家、伊藤秀男さんもお迎えして編集を担当されたポプラ社の松沢清美さんが司会進行で、急遽、お三人で、『タケノコごはん』』のことなどをお話し下さることになりました。はじめは10人ほどの方たちに聞いてていただけたら、と思っていましたが、お話を聞きたい方がたくさん来て下さり、いつものトーク会のように会場はいっぱいになりました。
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小山明子さん、武さんははじめて原画をごらんになったそうですが「迫ってきますね。文と絵がぴったり」「色のうすいところが浮き立ってみえ、すばらしい」と語られました。伊藤秀男さんが学校を描くのに取材をされた話をされ、絵本を朗読してくださいました。最後の色の白い先生が絶句しているシーンの背景にのどかに明るい色彩の花が庭に咲いているのを先の表情と対比させたかった、と語られました。伊藤さんの多くを語りすぎない語り口こそ、この絵本にふさわしい、と思います。黙って語らせる絵の力がみなぎっていて。
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にこやかに「パパの本の中で、この『タケノコごはん』の本が一番好き」といわれた小山さんのことばが心に残ります。大島武さん、新さんご兄弟がだされた『君たちは、なぜ、怒らないのか』(日本経済新聞刊)を読まれた小山さんが、お二人の文章にはなにもふれず巻末におさめられた「タケノコごはん」だけをほめた、と、小山さんと武さんが笑い合って語っておられました。この文章は大島渚監督が『愛のコリーダ』を猥褻罪で起訴されたとき、弁護側がこの『タケノコごはん』の文章をあげ「こんな文章が書ける人が有罪であるわけがない」と言った記録があるそうです。
- 「おかあさんのこと、きれいだと思っていたけど、洗顔後まゆがなくなった顔をみたときはこわかった」「外へ行くのときは整形したようだった、と書かれたりした」などの母子の和やかな語らいに、聞きにいらした方たちもすっかりリラックスして楽しむことができました。
- お話のあと、小山さんが「いっしょに写真を」といって下さって、7,8人ごとにごいっしょに写真に収まりました。
- そのあとは、お茶やワインを飲みながら、歓談のひとときを過ごしました。
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いつもとは違うお客様をお迎えするので、準備の間もドキドキでしたが、小山明子さんの明るい声と武さんのユーモアのあるお話ぶりに包まれて楽しくくつろぐことができました。自然体でみなさんのお話を引き出して下さった松沢さん、ここの場の磁力はなんといっても、すばらしい絵をかかれた伊藤秀男さん、みなさんほんとうにありがとうございました。そしてあっという間の連絡網(?)で集まって下さったみなさまに心から感謝いたします。『タケノコごはん』が大好きな人たちが、あの最後の無言の先生の思いを胸に抱いていっしょに過ごした今日のひとときはきっといつまでも心に残っていること思います。
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