毎日お祈りしていたので、神様が梅雨明けを1日早めて、田島征三さんトークの日は気持ちのいい晴れのお天気にしてくれました。これで、戸外で人数制限をしたトーク会、夕食会ができました。そしていつものように湯河原たんぽぽ作業所さんが、絵本「つかまえた」の中の飛び跳ねた魚を、クッキーに作ってくれました。これは参加申し込みをされた方に一枚ずつお土産にさしあげました。
田島征三さんの出来立ての絵本「つかまえた」(偕成社)の絵本は、田島さんの少年時代の忘れられない体験を、くっきりと表現された傑作です。絵本が生まれる下地になっている体験を、新潟十日町の鉢という村にある「絵本と木の実の美術館」で何をしたかったか、何をしたいのか、から話し始められました。在来の方法で川を作った。そうしたら、そこのきれいな水にゲンゴロウ、サンショウウオなどがすむようになり、また、タヌキ、イタチ、穴熊、そして鳥の王様サシバの姿も見られるようになった。水面を使う芸術は多いが、水面を濁らせるアオミドロを薬品で排除するのではなく、カモに食べさせるなどの方法で生き物が生息できる環境のなかでの芸術を作りたい、と思っている。
生き物と格闘しながら育った環境の中から、生まれてくる気持ちだ。幼い頃、双子の兄弟と、去ってやっととって夕飯のおかずにする魚をブリキのバケツで持って帰る。死なないでいてほしい、どうせ食べてしまうのにうちに帰った時は生きていてほしい、と願う。死んでると弟は泣きじゃくっている。そういう生き物との付き合い方。鳥も食べたくて、罠をいろいろ工夫して作った。夜罠を見に行くと鳥がかかっている。トラツグミはしぶとく、首をひねってもひねっても死なない。諦めて手を離すとフラフラと夜道を歩いて去っていく。その後ろ姿を兄弟で呆然と見ていた時のこと、などたくさん語ってくださいました。そういう生き物たちのいる自然の中の絵本を作りたい。木の実の芸術も絵本も、その想いと通じる。小さい頃から自分の中に住みついている生き物への愛着、喪失感、悔しさ、切なさなどが一緒になった、言葉では言い尽くせないことが押し寄せてきて、この「つかまえた」の絵本はできた、と。
感動と笑いに満ちた青空のもとのトーク会でした。この尊い時間を決して忘れないだろう、という思いでいっぱいでした。
そのあとたくさんのサインをしてくださり、朝日新聞のインタビューをおうけになり、また午前中はFM熱海湯河原、小田原の取材も受けられ大忙しの田島さんでした。夕方は、距離をとった戸外での夕食会。田島さんの話はどんなお話でも、ぐっと迫ってくるものがあります。出版社の編集の方たちも交え、また、岡田和枝さんの三線の音色に耳を傾けた夕暮れ時は、飛ぶ魚に本当に幸せな時間が流れました。田島征三さん、奥様の喜代江さん、そして、足を怪我してて思うように動かない私をサポートしてくださったみなさま、本当にありがとうございました。