夢のようなひととき、トーク会とアイリッシュハープ

11月7日の土曜日の午後、展示中の「てんにんにょうぼう」(福音館書店、長谷川摂子再話)の画家、中井智子さんのトークと、夫君の寺本圭佑さんのアイリッシュハープの演奏会がありました。心配だった雨にも降られず、コロナ対策のため全開のドアとガラス戸へと吹き抜ける風にのって、小鳥の声が聞こえる中でのひとときでした。

まず中井智子さんがどのようにして絵本ができていったか、天女のイメージを正倉院や平等院所蔵の絵を参考にしたり、天女の衣を男がかくした箱はどんなかを資料からさがしたり、でも基本は物語の流れを絵で感じられるようにと、編集の担当者と構図について話し合いながらすすめていったこと。(担当編集者も来ていたので、どんなに中井さんの絵を得て、むかしばなしの絵本化が可能になったか、情熱をこめて語ってくれました)そして絵の表現として、天女の衣がたなびく透明感をあたたかみとともに描くため、紅珊瑚の粉末など、顔料を膠をつかい、うすく塗り重ねる方法をとられたことなど、お話し下さいました。羽衣伝説の哀れと不思議を、美しさに包んで、子どもたちに届けてくれた絵は、中井智子さんの心を込めてていねいに描かれる手によってつむぎだされたものなのだ、と感慨深い思いでうかがいました。

その後には寺本圭佑(てらもと・けいすけ)さんのすばらしいアイリッシュハープの演奏がありました。400年くらい前につくられた素朴な気持ちをのせた旋律が、すきとおるような音色とともに奏でられて、耳を澄まし、心を澄ませて聞き入りました。あの世とこの世をいきかう音ともいわれるこのハープの音色を、羽衣伝説の絵とともに聞いていると、しばらくこの世からはなれて漂う幸せな時を過ごすことが出来ました。「ことりさん、おやすみなさい」の歌、妖精の音楽と題されたいくつかの旋律、そして350年ほど前の、盲目のアイリッシュハープの作曲家カロランのすてきな曲もいくつか演奏してくださり、また楽しい踊りのリズミカルな曲などもありました。楽譜は全く見ないで、曲の解説をまじえながらの、静かでやわらかくくつろいだ演奏会でした。

入場制限を厳しくさせていただいて、申し訳なかったのですが、しばらくはしかたありません。いらして下さった方々はほんとうに心が洗われるような時間をすごすことができた、と歓んでくださっていました。たんぽぽ作業所のみなさんがつくってくださったすばらしい「てんにんにょうぼう」のクッキーはいらしてくださった方へのおみやげでした。こんな素敵な時間をみなさんとごいっしょに過ごすことができて、ほんとうにしあわせな、いい秋の日でした。

ギャラリーカフェ飛ぶ魚

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