9月11日の「ささめやゆきさんトーク会」では「飛ぶ魚」がのギャラリーが、胸ときめく異空間として、立ち上った、という日でした。展示の「晴れ布」と名付けられたささめやさんの描かれた布絵が、爽やかな秋の風になってたなびいている中で始まったトーク会。まずは現在展示中の絵本「あるひあるとき」の朗読から始まりました。朗読してくださったのはお若い清潔感漂う女優の藤井咲有里さん。てらいのない、明快な発音の気持ちのいい朗読を耳にしてこのお話に入っていくと、ああ、このお話はこういうことであったのか、と、新しい思いで受け止めることができました。とくに、まだ燃やされないでいるこけしのハッコちゃんに「よかったね。よかったね」と女の子が話し、ハッコちゃんが「よかったよ。よかったよ」と答えるシーン。二人が横になって語り合っている声が、朗読の声で、ああ、ほんとに聞こえてきた、と思うことができました。
そして次にささめやゆきさんのお話。ご自分が、毎日毎日、苦しみながら絵を描きたっけてこられたことを振り返って、二人の先輩の画家から言われたこと、「自分のようになってはダメだよ」という言葉と「君は褒められたいの?」という言葉を、肝に命じて、ただひたすらに絵をかきつづけてこられた、そのただひたすらに描いてこられたことからのみ発せられる言葉、それが静かな語り口から、全身で伝わってくるお話でした。そしてそして、辺りが暗くなり、幻燈紙芝居の始まり始まり。装置も舞台も作品もささめやさんの手作り。もちろん語りも。裏側から照らされて輝く巻き絵が、カタカタと音を立てながら巻き取られ、シーンが変わります。サーカスの踊り子たちや、そして幼少期の映画を見たり遊んだらしたころ、そこにいたお母さんへの思慕、などが、ささめやさんの語りかける口調からワクワクと伝わってきます。
さて、そのあとはテラスでのサイン会。ささめやさんのたくさんの著書のうち今手に入るものはなるべく揃えましたが、ささめやさんの本の魅力は格別。サインも長いことかかってしてくださいました!ほんとうに、ささめやさん、朗読の藤井咲有里さん、のら書店のお二人、ありがとうございました。おかげさまで、今のこの時に奇跡のようなひと時がたちあらわれました。湯河原たんぽぽ作業所の方々がお作りくださった女の子とハッコちゃんのクッキー、二人の話し声が聞こえてくるような愛らしさでした。
そしてささめやさんの絵本が好きで、絵が好きで、来てくださった方たち、遠方からの方もおいででしたが、ありがとうございました。参加を希望されていたのに、人数制限でおいでになられなかった方たち、申し訳ありませんでした。ささめやさんの素晴らしい仕事が並んだ展示はまだ始まったばかりです。どうぞ10月16日までの金土、開催しておりますので、どうぞ見にいらしてください。
それから私は、会が始まる時、署名を言い間違え、藤井さんのファーストネームを失念して、ほんとうに恥ずかしい始まりになったことを謝りたいと思います。なんだかダメだなーとほんとうに夜はうなされそうに悲しかったです。でも、明けない夜はない、また気持ちを新たに、この素晴らしい展覧会を続けたいと思います。